高分子生活と人間生活

機能性高分子化合物

吸水性高分子

 アクリル酸塩CH2=CH-COONaの重合体で三次構造(網目構造)となる。吸水により,-COONaが電離すると,-COO間で反発し網目が拡大し,そのすきまに水が入り込む。衛生用品,農業用材として使われる。

 
 

導電性高分子

ポリアセチレン[CHCH]nとヨウ素I2から,金属に近い電導性をもつ高分子化合物がつくられる。タッチパネルやコンデンサーへの利用が進んでいる。

 

イオン交換樹脂

分子中に電離できる基をもたせ,水溶液中のイオンをHOHに交換する機能を持った樹脂をイオン交換樹脂という。

分子中にカルボキシ基−COOHやスルホ基−SO3Hなどの酸性基を多く持った樹脂〔 陽イオン交換樹脂 〕といい,溶液中の陽イオンをHに交換する。代表的なものにスチレンC6H5-CH=CH2p-ジビニルベンゼンCH2=CH-C6H4-CH=CH2の共重合体をスルホン化したものがある。

 
 

Na(溶液に多量に存在)とH(樹脂に多量に存在)は濃度に偏りがあるので,拡散するために入れ替わる。そのため,濃い塩酸などを通すと逆反応がおこり,樹脂が再生する

分子中に,水酸化トリメチルアンモニウム-CH2-N(CH3)3OHなどの塩基性基を多く持つ樹脂は〔 陰イオン交換樹脂 〕といい,溶液中の陰イオンをOHに交換する。

 
 

生物分解性高分子

 生物資源由来の物質から合成した高分子は,微生物によって分解され,生物分解性高分子(生物分解性プラスチック)とよばれる。〔 ポリ乳酸 〕[OCH(CH3)CO]n,〔 ポリグリコール酸[OCH2CO]nやデンプン,セルロース由来のものもある。

 
 
 

【合成樹脂(プラスチック)の廃棄と再利用】

 石油資源の有効利用,ゴミ問題の観点から,プラスチックの再利用(リサイクル)は重要課題であり,現在,以下のような方法がとられている。

 

プラスチックの燃焼の際,窒素酸化物や塩化水素などの有毒ガスが発生する危険性がある。このため,発生するガスの浄化処理が必要となる。塩素原子を含んだプラスチックからは,有毒なダイオキシン類(塩素で置換されたベンゼン環2つからなる物質)が発生しやすい。ゴミ焼却施設付近の土壌汚染が問題になっている。

 

例題

ポリスチレンにスルホ基が結合した化合物は,イオン交換樹脂Aとして利用されるが,もう1つのイオン交換樹脂Bと組み合わせることによって,イオンを含む水溶液を純粋な水にすることができる。たとえば,硝酸カリウム水溶液をABに接触させると,次のように変化して純粋な水が得られる。イオン交換は完全に行われるものとして,次の各問いに答えよ。

 
 

(1) (ア)〜(エ)にはイオン式を,@およびAには適当な構造を入れよ。

(2) 硝酸カリウム水溶液の濃度を知るために,その10mLをとり,イオン交換樹脂Aを詰めた円筒を通過させた。次に,樹脂を十分に水で洗い,流出液と水洗液を合わせて,0.010mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ,15mLを要した。この硝酸カリウム水溶液のモル濃度はいくらか。

 

(1) () K  () H  () NO3  () OH  

(2) 陽イオン交換樹脂を通すと,KはすべてH+になる。また,このHを中和しているので,各物質・イオンの関係は物質
 量〔mol〕で,KNO3KHOHNaOHとなる。NaOHは,0.010×0.0151.5×104mol〕。よってKNO3のモ
 ル濃度は,10L(=0.010L)なので,1.5×104/0.0101.5×102mol/L